限界オタク大学生の映画感想ブログ

限界大学生の映画感想ブログ。ドラマやゲームについても。記事にネタバレ含みます。

『映画 おそ松さん』(2022)オリキャラに感情移入せざるを得ない特殊な映画。映画のテンプレ批判も多めで芸術的

原作『おそ松くん』監督:英勉 脚本:土屋亮一 出演:Snow Man高橋ひかる桜田ひより、前田泰之ほか

2021年8月上旬、あるニュースが目に飛び込んできた。それは愛の世界とかではなく『おそ松さん ジャニーズ主演で実写化』というもの。限界受験生だった自分は跳ね起きた。そしてある感情が頭の中に生まれた。

 

「絶対失敗するじゃん!!!!」

 

筆者は小6の時にアニメの『おそ松さん』一期を観ていた。下ネタがあるとも知らずに親と一緒に観ていたし、○コ松の意味を親に尋ねたりもした。そんな微黒歴史は置いておいて、あの『おそ松さん』が実写化となると流石にドン引きした。どうやっても失敗するのが分かりきっている作品じゃないかと。アニメで既にある程度完結しており、オマージュパクりだらけが売りなのに、下手にジャニーズ絡めて実写化なんて「何を狙ってんだ」となった。

 

受験のためログアウトしていたTwitterに急いでログインし、みんなの意見を見ていたが結構賞賛の意見が多かったように思えた。しかしそれはジャニーズファン側の意見、アニメファンは否定的。時間が経つと賞賛の意見も少なくなっていた。ちょっと面白かったのが、ジャニーズファン側が「うちのジャニーズが迷惑かけてしまってすみません」と言い、おそ松さんファン側が「うちの作品下品すぎてすみません」と返す。このやり取りは正直平和だなと感じたが、そういう問題ではない。

 

実写化『鋼の錬金術師』の二の舞、下手すれば互い(Snow Man・原作側)にも傷が付く。当時は実写『デビルマン』になるかも、とか言われていた。なお現在は『大怪獣のあとしまつ』がポストデビルマン枠になっていたりする。だが自分はめちゃくちゃ気になっていた作品である。何で『おそ松さん』をこのタイミングで実写化したんだろう。しかもよりによって新生ジャニーズ。何なら9人組、残り3人はオリジナルキャラクターとして映画に出演する。地雷踏みまくりじゃねぇか、何だこの作品。逆に気になってきたわ。

 

《あらすじ》

色々あって「顔が似ている」という理由で養子に迎えられることになったおそ松。しかし「顔が似てるのなら俺でもいいよなぁ」となり、6つ子の中で誰が1番優秀かを競い合う。東大を目指す者もいれば、ホストを目指す者、またメジャーリーガーを目指す者まで現れる。物語の収集がつかずハチャメチャになったところで、物語終わらせ師が登場し……?

 

ここからネタバレあり感想

 

《感想》

自身が大地雷でありながらも多方面に喧嘩売ってる作品で、その上めちゃくちゃ面白かった。喧嘩売ったものをざっと思い出すと「映画になると突然現れる豪華な設定と展開」「ループもの」「寿命もの」「劇場版用の豪華な爆発事件」「デスゲームもの」 「夢オチ」とか。そして根本的な「実写化の限界」にも触れていた。彼らはこう言う、「カツラと服装さえ合っていれば、それはもうおそ松さんだよ」と。

実はこれが伏線でもあり今回の作品のキーポイントであった。身長も体格も違う6人が、色違いのパーカーとカツラを着ければ「六つ子の兄弟」になる……とかいう設定を物語に組み込んだ。よって、それらの設定は六つ子を演じるSnow Man以外の人間にも適用される。

例えば、SixTONESにカツラとパーカーを着けてもおそ松さんだし、Travis Japanに着けても俺に着けても、服装と髪型さえあっていればおそ松さんになれる。顔なんて関係なかった。

この設定を巧みに利用して、おそ松らはラスボスを倒す。というか、ラスボスをまた別の存在に作りかえる。ここら辺のくだりは本当に面白かった。とにかくこのシーンは観てほしいので、あまり多くは語らないようにする。

「実写化なんて無理がある」と最初から認めている、というか本人も認めてるような作品が生み出したのは、とてつもない伏線と笑いと、謎の幸福だった。これは観ても失敗はしないけど、賛否両論はある。どちらかと言えば否大量。だけど個人的には今年観た邦画の中で1番好き。2位は恐らく『月の満ち欠け』になる気がする。